2024年は、技術革新と規制対応が交錯し、業界全体に柔軟で戦略的な対応が求められた一年だったと言える。こうした状況の中、株式会社フォーエムは、パートナーの皆さまとともに業界を盛り上げるべく、年末年始企画「Leaders’ Insights for Publishers」をスタートしました。本企画では、フォーエムと関わりのあるエグゼクティブの皆さまに寄稿を依頼し、それぞれの視点から2024年を振り返るとともに、2025年のさらなる成長を見据えた注力ポイントについてお話を伺った。本企画を通じて、当社は皆さまと一丸となり、業界の発展に貢献していく決意を新たにしています。
株式会社文藝春秋にて、オンライン広告部部長を務める田畑亮氏の回答は以下のとおりだ。
プロフィール
2017年7月~アドネットワーク 専任担当者となる
2018年8月~株式会社フォーエムと提携する
2020年9月~株式会社文藝春秋Web広告チーム 統括
2022年7月~メディア事業局オンライン広告 部長
2024年7月~デジタル戦略事業局デジタル広告部 部長
純広告・PMPの受発注・メニュー改善、新規大型開発、システム導入等が注力業務
アドネットワークに関するメイン業務(編集部との折衝資料作成、数値計測・検証、配信設定他)はデジタル広告部他メンバーが担当
2024年に取り組まれた主な仕事やプロジェクトについて
ディスプレイ広告においてはオファーウォールやインタースティシャル広告など全画面広告が収益の中心となった1年でした。その他、ログイン システム、マイクロペイメントなども議論しましたが収益メリットを見いだせず、具体的な導入は検討しませんでした。
また導入したサービスにおいてはGoogle製品の収益力が突出しており、アドネットワーク業務の高度化がグローバルイノベーションと密接に絡んできた印象があります。ただし、ファーストパーティ データ活用についてはパブリッシャーの課題として残されており、引き続きデータ収集と利用方法を検討しています。
他方、3rd Party Cookies利用停止における各種代替案を検証すると、容易にCPM上昇できるサービスがないことは一目瞭然です。ユーザーターゲティングの精度において3rd Party Cookiesの存在感はあまりにも大きく、収益とユーザー エクスペリエンスのバランスにも配慮することが重要になってきました。
2024年のメディア業界で最も注目された出来事
国内の選挙でSNS活用の巧拙が結果に影響しました。アメリカの選挙がMetaなどに左右されるという報道に接しても識字率や教養の問題と受け流していましたが、日本のネットワーク空間にも政治的バイアスの危険性が忍び寄ってきたと認識しています。
2025年に向けての抱負や目標
User Generated Content(UGC)と称される一般ユーザーが作成したコンテンツに依存するSNSの社会的影響力は日増しに大きくなっています。かたやパブリッシャーはプロフェッショナルコンテンツを通じて“量より質の重要性”を訴求しています。
収益面ではオファーウォール(全画面広告)を導入するなど完成されたサービスを利用していますが、メディアが制作するオリジナルコンテンツの価値はパブリッシャーが自ら証明すべきであり、サブスクリプション(課金ビジネス)導入だけが解決策ではありません。
多くのユーザーが接触する無料コンテンツの可能性、その価値をクライアントに伝える説明責任(アカウンタビリティ)がパブリッシャーのデジタル広告担当者にはあります。視界良好とは言えず、むしろ手探り状態ではありますが、部員メンバーと協力し探究心を持って臆せずトライする2025年にしていきます。