- 1.はじめに
- 2.広告タグを直接掲載する事業者としてのSSP
- 3.GAM(Google AdManager)でDA(Dynamic Allocation)する相手としてのSSP
- 4.Header BiddingとしてのSSP
- 5.その他の関わり方
- 5-1. SSPのパスバック先としてのSSP
- 5-2. 短期間だけ、または少量だけ配信するSSP
- 6.おわりに
1.はじめに
SSPの基本的な機能として「RTBによるオークション」「広告タグから収益が最も高くなるような配信の調整」があります。それを補う機能として、「レポート機能」「アドサーバー機能」などの付加価値を持つ機能が開発されました。それらの機能は、SSPが競争していく過程で研究開発され、磨かれていったサービスです。
では現在のwebメディア担当者は、複数のSSPとそれぞれ異なるサービスを前に、何を基準に取引先を選べばよいのでしょうか?webメディアとSSPの関わり方は大きく3つに分かれます。ここではおおむね世の中に登場した順に説明していきます。
2.広告タグを直接掲載する事業者としてのSSP
SSPは、ウェブサイト運営者が広告枠を効率的に売り出し、最大限に収益を上げるための技術です。
広告タグを直接ウェブサイトに掲載し、リアルタイム入札により広告スペースを最高額で買いたい広告主に提供します。
これにより、各広告表示のたびに最適な広告主が選ばれ、収益の最大化が図られます。
また、SSPは広告パフォーマンスのデータ分析を提供し、広告の価格設定や戦略の最適化を支援します。
多様な広告ネットワークへのアクセスも可能で、広告主のニーズに応じた効果的な広告配信が可能です。
3. GAM(Google AdManager)でDA(Dynamic Allocation)する相手としてのSSP
この位置のSSPは、GAMのDAで戦う設定されます。最初のリクエストを受けたGAMと「DAで戦って勝った場合」にだけ、そのリクエストに対して入札する権利(SSPとしてオークションを発生させる権利)を得ます。前項の競争で破れたSSPがこのポジションに収まることはよくあります。
この立場では、SSPの「webメディアに一番近い場所に居ること」という本質から一歩離れた立場になります。GAMの中にSSPタグを設定されるため、そのwebメディアから発生する全てのリクエストにアクセスすることが出来ないからです。
GAMのDAで設定されているタグがこの立場のSSPになります。例えばGoogle AdExchange(AdX)が全リクエストのうち50%を買ってくれた場合、残り50%のリクエストの収益を左右するのがこのSSPです。CPMが大きく下がるため、どんなに頑張っても媒体の全体収益の50%には絶対に届かない点にはご注意ください(もしも50%に迫っていた場合、設定を見直しましょう。)
前述のように、webメディアの立場では、このSSPには「AdXが買わない価格帯を一定ボリューム買い付けてくれる」ことを期待したいです。DAの相手として自然に良い成果を出してくれるのはもちろん、例えば「CPMと配信数を保証してくれる」「SSP自体が広告営業を頑張ってくれる=webメディアとしては自社広告枠を販売してくれる」等が挙げられます。まれにこのSSPのパスバック先の事業者(つまりAdX→SSP→パスバック先事業者)の運用にものすごくこだわる人が居ますが、全体の収益を考えるとあまり意味がありません。(億PVを超えるメディアの場合は例外です)
4. HeaderBiddingのBidderとしてのSSP
この立場のSSPは、HeaderBiddingのWrapperを通じてwebメディアの広告在庫を買い付けています。
前二項のような過程を経て、SSPはwebメディアの最初の最優良な広告在庫からのリクエストを受けられなくなり(1参照)、GAMのDAを通じて1には劣るが一定ボリュームのリクエストを確保してきました。このSSPに不利な状況を一定水準で逆転させた仕組みがHeaderBiddingになります。詳細は別項に譲りますが、簡単に言うと「GAMの外側でSSPだけのオークションを開催し、その結果(SSPの中でNo1の入札金額)でGAMのDAと戦う」というものです。
BidderとしてのSSPは、直接webメディアのCMSにタグを記載したり、GAM内にタグを設定したりはしません。Wrapperと呼ばれるツールのタグがGAMに設定されます。WrapperにどのSSPを設定する(あるいは設定から外す)ことで競争させるかは、webメディアまたはWrapperの手腕になります。
- 前述のように、HeaderBiddingにはWrapperが不可欠です。したがってSSPの中でもHeaderBiddingに注力している事業者は、Bidderでありながら同時にWrapperを提供している、といったケースもあります。ただ、システムに掛かる負荷が多重になるので、力のあるSSPにしか出来ません(通常のSSP本体として接続しているDSP数十社に対するオークション+WrapperとしてSSP同士のオークション会場の提供)。
5. その他の関わり方
以上のようなwebメディアそのものの収益性を大きく左右する取り組みとは別に、主流にはならない取引きや、金額も大きくなりにくい取り組みの例は以下などがあります。
5-1. SSPのパスバック先としてのSSP
GAMのDAで設定されるSSPにも、パスバック先としてさらに広告事業者を設定出来ます。
この時さらにSSPを設定することで、少しでもDSPに購入してもらおう、という考え方もありました。第2、第3のSSPになると、オークションで高く買われるユーザーは殆ど残っておらず、単価は非常に低くなります。それどころか致命的な欠点があります。広告事業者は、パスバックを繰り返すほどのに広告の表示とwebメディアの表示が遅くなる、という点です。かつては主流とも言える方法(Water Fall。ウォーターフォール)でしたが、GAMの普及、HeaderBiddingの登場、サイトスピードが重要視されるようになり、いまでは殆ど使われない手法となっています。
5-2. 短期間だけ、または少量だけ配信するSSP
収益性などのテスト配信や、PMPのように高単価な案件を配信する、といった目的が無い場合は、殆ど意味がない配信になります。
SSPは時間をかけてweblディアのデータを蓄積し、データを元に最適化されていきます。短期間、少量といった条件では、配信するのSSPだけでなく、webメディアにとってもメリットはありません。掲載するのにかかる工数、契約の手間などは馬鹿にできません。
6. おわりに
かつては覚えきれないほどSSPが存在し、それぞれが「広告タグを直接掲載する事業者としてのSSP」としての立場を目指していました。それがこの数年ですっかり淘汰・統廃合されたのと、その過程で「全事業者が広告タグを直接掲載(ファーストリクエストとも言います)を狙うわけでは無くなった」ために、3つの役割に分かれていったとも言えます。
売り込みに来たSSPが、「上記のどの役割にふさわしいのか」で分類し、その中で取捨選択をすればよくなりました。webメディアにとっては、SSP事業者を選ぶのは簡単になって来たのではないでしょうか。