- 1.3rd party cookie終了の背景
- 2.Unified ID 2.0とは
- 3.Unified ID 2.0の仕組み
- 4.Unified ID 2.0の実装方法
- 5.Unified ID 2.0のメリット
- 6.Unified ID 2.0のFAQ
- 7.まとめ
1. 3rd party cookie終了の背景
Googleは2022年7月28日に、Google Chromeブラウザにおける3rd party cookieのサポート完全終了を2024年後半頃から段階的に進めていくと発表しました。
2020年1月の発表では、2022年内の完全廃止を予告していましたが、その後2023年後半に延期した後、今回で2回目の延期が発表された形になります。
Google Chromeブラウザでは今後段階的に廃止が進められますが、Appleの標準ブラウザであるSafariでは、2020年3月にデフォルトで完全にブロックされています。
そもそも3rd party cookieとは、ユーザーが訪問中のWebメディアとは異なるドメインから発行されるCookieを指します。Cookieは、Webメディアに訪れたユーザー情報を一時的に保存しておくための仕組みです。
具体的には、Amazonで過去に閲覧した商品情報が再びログインした際に残っていたり、再びログインする際はID情報の入力が不要になったりする仕組みを指します。
このようなCookieの仕組みを利用することで、Webマーケティングにおける3rd party cookieはさまざまな場面で活躍の幅を広げていました。
・デジタル広告の効果測定
・リターゲティング広告の設置
・アフィリエイト
・CVに対する広告貢献度の分析
ユーザーがリターゲティングタグが設置されているWebメディアに訪れた際、その情報を基に別のWebメディアで自社の商品やサービスの広告を表示するのがリターゲティング広告です。
費用対効果の高いリターゲティング広告などを表示する際に使われる3rd party cookieですが、ユーザーのプライバシーを脅かす恐れがあるとして、Appleを筆頭に規制を強めています。
そもそもWebメディアを利用するユーザー側は、自身のデータがどのように活用されているかを完璧に把握することは難しいのが現状です。
この点がプライバシーを重視するユーザーの間で問題視されるようになり、3rd party cookieの利用を終了するという背景へと繋がっていきました。
2. Unified ID 2.0とは
プライバシー保護の観点から廃止が進められている3rd party cookieに代わる、新しいIDソリューションとして高い注目を集めているのがUnified ID 2.0です。
テクノロジー企業であるThe Trade Deskにより開発されたUnified ID 2.0は、ユーザーのメールアドレスを暗号化することで識別子を作成します。
従来まで利用されていたCookieは、人ではなくブラウザ単位でデータを取得していました。しかし、Unified ID 2.0は広告チャネル全体を横断して機能することが可能となります。
その結果、Webマーケティングを行う企業は広告チャネル全体の横断ができるようになり、ユーザーは個人情報を保護できるようになります。
完全に3rd party cookieから独立したシステムになっているため、ユーザーのプライバシーを侵害することなく、パーソナライズされた広告を掲載できるのです。
3. Unified ID 2.0の仕組み
インターネット上のユーザーの行動を基に、興味関心が高そうな広告を表示することでパフォーマンスを向上させるターゲティング広告。
従来までは3rd party cookieが行動ターゲティングの中心を担う機能でしたが、規制や廃止に伴い、Unified ID 2.0という新しい広告の仕組みが誕生しました。
Unified ID 2.0の仕組みを下記でわかりやすく解説します。
1. ユーザーのメールアドレスをシングルサインオンで取得
2. ユーザーが同意すると暗号化・ハッシュ化された識別子が作成される
3. パブリッシャーは作成されたUID2 Tokenを入札システムへ送信
Webメディアに紐づけされたUID2 Tokenは、認証が済んでいるDSPでしか復号できません。そのため、Unified ID 2.0が機能するためには復号を行えるプロバイターが必要です。
依然として、広告キャンペーンの目標を達成するために十分なユーザーの同意を得られるかという点については課題を抱えていますが、技術的には問題ありません。
4. Unified ID 2.0の実装方法
Unified ID 2.0は、さまざまなIDソリューション、デバイス、OS、ブラウザに依存することなく利用できるオープンソースです。
フレームワークがオープンソースで提供されているため、参加者は完全無料かつ、Cookieの同期を必要とせずにアプローチすることが可能です。
そもそもUnified ID 2.0を開発したThe Trade Deskは、このシステムを中立的に広告エコシステム全体で利用できるものとして発表したという背景があります。
2021年5月24日に正式にオープンソース化されたことで、プライバシー重視の機運が高まり廃止されたCookieに代わるIDソリューションとして、高い注目を集め始めたのです。
5. Unified ID 2.0のメリット
ここからは、Unified ID 2.0に対応することで得られるメリットを3つ紹介します。
・消費者のプライバシーを考慮しながら広告を最適化できる
・誰でも機能を改善できる柔軟性の高さ
・リーチの拡大と高い費用対効果/
5-1. 消費者のプライバシーを考慮しながら広告を最適化できる
3rd party cookieが廃止されるまでは、Cookieから取得した情報を基にターゲティングを行っていました。
プライバシー保護の機運が高まり廃止されたことで、見込みのあるユーザーに対してターゲティング広告が配信できなくなり、CV数の減少に影響を与えると予測されています。
それだけではなく、複数のWebメディアを介して流入した場合にCookie情報を読み込めないため、正確なCVの計測ができなくなるという影響も考えられていました。
しかし、Unified ID 2.0に対応していれば、紐づけられている広告配信データを組み合わせてターゲティングができるため、広告の最適化を引き続き実現することができます。
さらに、前述の通りUnified ID 2.0は広告チャネル全体を横断して管理・分析ができるため、従来よりも精度の高いWebマーケティングが行えるようになります。
ストリーミングTV、オーディオ、アプリ、ブラウザー、モバイルなど、デバイス全体の広告運用を単一のIDで管理できるため、より有力なデータを得ることが可能です。
5-2. 誰でも機能を改善できる柔軟性の高さ
Unified ID 2.0はオープンソースで提供されているため、誰でも変更や更新を提案することで機能を改善できるという柔軟性があります。
中立を保つために「Prebid.org」という独立した機関が管理しているため、利害関係者は一律で利用規約に従う必要があり、それによりユーザーのプライバシーも確保されています。
5-3. リーチの拡大と高い費用対効果
Unified ID 2.0はデバイス全体の広告運用を単一IDで管理できるため、リーチを拡大しながら高い費用対効果があることでも知られています。
D2C企業の「Made In」は、Unified ID 2.0を採用することでCPAの20%削減とコンバージョンの22%増加を達成。玩具会社の「Coco Village」は、40%のリーチ拡大を達成しています。
3rd party cookieよりも有力なデータを取得できるUnified ID 2.0を採用すれば、今までは届けられなかったユーザーへもリーチを拡大することができます。
6. Unified ID 2.0のFAQ
ここからは、Unified ID 2.0に関するFAQをまとめて紹介します。
6-1. サポートしている企業は?
近年では、広告プラットフォーム企業が次々にUnified ID 2.0のサポートを発表しています。一部ではありますが、サポートを表明している企業は下記の通りです。
・SSP/DSP⇒PubMatic、SpotX、UNRULY、xandr、Fluct、YieldOne、Ad Generation
・計測ベンダー⇒ニールセン、Comscore、TAPAD
・パブリッシャー⇒The Washington Post、Rolling Stone、tubi、BuzzFeed
現時点でサポートを表明しているすべての企業は、TDDのWebメディアから確認できます。
6-2. ユニバーサルIDの生成方法は?
ユーザーの同意により作成されるユニバーサルIDは、Cookieから生成することが可能です。しかしながら、Googleにより3rd party cookieが廃止されると、関連性は低くなります。
3rd party cookieのプライバシー問題を解決するための手段として、ユニバーサルIDは1つの方法であるとGoogleも見解を示しています。
7. まとめ
3rd party cookieに代わる新しい広告識別子であるUnified ID 2.0を紹介しました。
近年の3rd party cookieは、2018年にEUがCookieを利用する際には必ずユーザーの同意が必要であると改正し、Appleの標準ブラウザSafariでは廃止。
Googleにおいても、2024年後半から段階的に廃止を進めていくと発表しています。
脱Cookieの動きが進む社会の変化に合わせて、新しいIDソリューションであるUnified ID 2.0の活用と実態の把握を進めなくてはいけません。