今回は、アプリ運営に欠かせない「KPI」とKPIを使って目標に対する課題を整理する「KPIツリー」について解説をしていきます。
とはいえ、KPIやKPIツリーそのものに関する解説は、書籍やウェブ記事、動画の形で非常に質の高いものが多く紹介されています。
ですので、この記事ではより実践的に進めたいと思います。
具体的には、
・同じKPI項目にも指標に種類がありすぎて、どれを選べばいいのかわからない
といったお悩みに答えられるように、
・KPIで使われる指標と使い分けられ方
・KPIツリーに基づいたアプリ運用
の2点に絞って解説していきます!
1. KPIは「物差し」
とはいえ、今回取り上げるKPIについてしっかりと整理をしてから本題に入りましょう。
KPIとは、「Key Performance Indicator」の略で、日本語で「重要業績評価指標」と訳されます。
メディアハッカーでは、「ゴールに欠かせない何か」が「ゴール達成に必要なうちどれだけ満たしているか」を示す物差しだと理解しています。
(ゴールのことをKGI「Key Goal Indicator:重要目標達成指標」といいます)
ここで重要なのが、3つです。
・ゴール(KGI)があって、KPIがあること
・KPIは、KGIに紐づいていること
・KGIとKPIは、どのくらい満たしているかを定量的に計測できること
例で考えてみましょう。
まず、ゴールの立て方からです。
1年後の目標を「より多くのユーザーに満足してもらう(ゴール)」にしたとします。
大事な心がけです。
しかし、この目標はゴールにはなりません。なぜなら、達成できたどうかを測れないからです。
フェンスのないスタジアムではホームランかどうかわからないですよね。 では、フェンスのないスタジアムであってもホームランかわかるように、フェンス代わりのラインを引きましょう。
つまり、飛距離◯m以上はホームランと決めるわけです。
先ほどの目標にも同じことが言えます。
・より多くのユーザー→何人?
・満足してもらう→満足してるかどうかをどう見分ける?
と基準(飛距離)や測り方(フェンス・ライン)がない状態になってしまっているのです。
なので、目標をKGIとして成り立たせるために、基準と測り方を決めましょう。
ここでは、満足度をストアレビュー評価で測ることにして、ここから1年間に100件のストアレビューを書いてもらい、平均評価を4.2以上にするとしたとしましょう。
ゴールが設定できたら、次にゴールを達成するための項目を考えましょう。
ここでは、KGIは大きく2つの要素に分けられます。
ストアレビューを書いてもらう部分と、評価4.2を目指す部分です。
この2つがKPIのもとです。
KGIを達成するために欠かせない要素のことです。
この2つが達成されていれば、KGIも達成することができます。
KPIも測る必要があるので、KGIの時と同様に基準と測り方をつける必要があります。
例えば、
評価:星5が20件以上。星4が80件以上。合計100件以上
とすることと、この条件が満たされた時に、KGIを達成できるので、KPIとして成立します。
また、これらをさらに細分化していくことで、KPIから必要なアクションを導くことができます。この部分に関しては、後半のKPIツリーの部分で解説します。
では、整理しましょう
KPI:KGI(ゴール)を達成するために欠かせない指標の達成度合いを計る物差し
KPIの条件:「KGIに紐づいている」「KPIを達成すれば、KGIも達成できる」「定量的に計れる」
2. アプリ運営でKPIに使われる指標と使い分けられ方
では、ここから本題です。
アプリ運営でよく用いられるKPIは、大きく3パターンに分けられます。
<アプリ売上がKGIのパターン>
1.ユーザー数(DAU, WAU, MAU)
2.ユーザー1人当たりの売上
<アプリ売上以外がKGIのパターン>
3.売上以外のアプリパフォーマンス
2-1. ユーザー数(DAU, WAU, MAU)
日別/週別/月別にそれぞれの期間にアクティブになったユーザーの数です。
アプリビジネスはアクティブユーザーが収益やパフォーマンスの母体になるので、非常に重要な指標です。
ここでよくあるお悩みが、 DAU, WAU, MAUとあるけど、違いって何?どれを使えばいいの?
というお悩み。
今回はこちらを解説します。
期間内のアクティブユーザー(まとめて、xAU)の違いは、当たり前ですが計測の期間です。
DAUは、1日にアクティブなユーザー数
WAUは、1週間にアクティブなユーザー数
MAUは、1ヶ月にアクティブなユーザー数
この違いは何を意味していて、どう使い分けるのがいいのでしょうか。
そもそも、xAUはそのアプリの実際の利用度合い、どれだけのユーザーに使われているかを測るための指標です。
つまり、そのアプリの使われ方にあった測り方をする必要があります。
xAUが細分化しているのは、アプリの種類や特性に応じて、計測すべき期間の単位が違うからです。
では、計測すべき期間の単位は何で決まるのでしょうか。
xAUは、そのアプリがどれだけのユーザーに使われているのかを測るための指標ですから、そのアプリの想定される使われ方に沿った使い方をしているユーザーを計測することが重要です。
想定される使われ方とは、例えば
・毎朝出勤時にニュースを見るためにアプリを起動する
・毎週更新される最新話を見るためにアプリを起動する
・毎月のセールでお買い物をするためにアプリを起動する
などです。
ここで重要なのが、「なるべく毎日使って欲しい」といった理想で決めるのではなく、実際のユーザーがどのくらいの頻度で起動するのかに基づいて決めることです。
決め方の目安になるものとしては、
・1アクティブユーザーあたりの起動回数が1になる期間
・コンテンツが更新される頻度
などが使えます。
上記を踏まえると、xAUの各指標はそれぞれ以下のようなアプリに当てはまります。
DAUを使うべきアプリ:チャットツール、SNSアプリなど
WAUを使うべきアプリ:漫画アプリ、VODアプリなど
MAUを使うべきアプリ:服・家電などのECアプリ、旅行予約アプリなど
ここまでの議論を参考に適切なxAUを考えてみてください。
2-2. ユーザーあたりの売上
続いて、売上のもう一つの構成要素である1ユーザーあたりの売上についてです。
ARPU(Average Revenue Per User)とも表されます。
ARPUは、アプリの収益化の方法によってさらに細分化されます。
アプリ内課金の場合:課金ユーザーの比率(PUR, Paid User Ratio) x 1課金ユーザーあたりの収益額(ARPPU, Average Revenue Per Paid User)
アプリ内広告の場合:1ユーザーあたりのvimp x eCPM
ECの場合:購入ユーザーの比率(TUR, Transaction User Ratio) x 1購入ユーザーの収益額(ARPTU, Average Revenue Per Transaction User)
これらは、さらに項目ごとに細分化されます。
なので、また別の記事でじっくり取り上げます。そちらをお楽しみに!
2-3. 売上以外のアプリパフォーマンス
例えば、実店舗の集客を目的にしているアプリやWebサービスの登録者に使ってもらうためのアプリなどが当てはまります。
こういったアプリでは、本業(売上を生んでいるサービス)の収益額アップにどれだけ貢献できたかが重要になります。
ですので、以下のような指標がKPIとして用いられるケースが多くなっています。
アクティブ率:アプリDL数に対するアクティブユーザーの比率
アプリ機能利用率:アプリ内会員カード機能、ポイント機能、アプリ内クーポンなど
アプリ利用率:本業利用者とアプリユーザーの比率
アプリ満足度:アプリ利用による満足度の向上度合い。アプリ利用セグメントと非利用セグメントの比較などで求める
これらはアプリの運営目的(KGI)別に使い分け、必要なKPIのみを追うようにしましょう。
これまで話してきた通り、KPIはKGIに紐づいていて、KPIが達成されることでKGIが達成されるようになっていなければいけません。
なので、KGIの達成に関係ないKPIは、KPIとは言えません。
例えば、下のような組み合わせはNGです。
KGI:来年3月の店舗訪問者を、前年同時期比で1.2倍
⇅
KPI:アプリ利用者の満足度を、アプリ非利用者の1.5倍
KPIが増えたからといって、KGIが達成されるかはわかりませんよね。
この例は極端ですが、実際KPIを設定するときに「目標としては大事だけど、KGIには紐づかない」ものを設定してしまうのはあるある落とし穴ですので、何度もチェックを行いましょう。
チームや社内に意見をくれる人がいたら、ぜひ意見を求めてチェックをしてもらいましょう。議論の中でより良いKPIが見つかるかもしれません。
3. KPIツリーに基づいたアプリ運用
KPIは、立てることではなくKPIを運用することが大事です。
KPIの運用とは、毎日進捗を確認して、達成に向けて必要なアクションを決めることです。
一言で言うなら、KPIの進捗状況に応じてPDCAサイクルを回すことが重要です。
当たり前のようですが、ここをいかに緻密に細かく丁寧にできるかが、KGIを達成できるかを左右します。
PDCAを回す上で重要なのが、正しい進捗をなるべくリアルタイムで把握することです。
情報の質と、鮮度が重要なのです。
また、その情報を確認する手間がなるべくかからないようにしておく必要があります。
KPIの計測には、Firease, Google Analyticsなど無料で計測・分析できるツールもあります。
しかし、ツールの使い方や計測の正しい設計ができていないと、素晴らしいKPIがあっても活用することができません。
KGI/KPIに基づいたデータ収集基盤の構築にご興味がある方は、こちらから資料を確認してみてくださいね。
4. まとめ
今回は、『アプリを成長させるための第一歩!
KPIを理解して、自分のアプリにあったKPIツリーを組み立てる方法』と題して、アプリ運営上のKPIの役割と、どんなKPIを選択すれば良いのかの判断基準、運用の方法を解説してきました。