1.はじめに
最近になって「コンテクスチュアルターゲティング」という言葉を目にすることが増えたと感じている方も多いのではないでしょうか?
コンテクスチュアルターゲティングとは、WEBサイトのコンテンツにマッチする広告を配信できる手法で、3rd party cookie(サードパーティクッキー)廃止後の広告配信手法として、注目を集めています。
この記事では、コンテクスチュアルターゲティングについて詳しく解説します。
<この記事はこんな方におすすめ!>
・コンテクスチュアルターゲティングとは何か知りたい
・なぜコンテクスチュアルターゲティングが注目されているか知りたい
・3rd party cookie(サードパーティクッキー)の規制・廃止に伴い、クッキーに依存しない広告配信手法を探している など
2. コンテクスチュアルターゲティングとは
コンテクスチュアルマーケティング(コンテキスト広告、コンテクスチュアル広告)とは、WEBページ上にあるコンテンツの文脈(コンテキスト)を分析し、それに合った広告を配信できる手法のことを指します。
新しいターゲティング方法かと思いきや、実はコンテクスチュアルマーケティングは2000年代初期には登場しており、20年を超える歴史がある手法です。
「コンテンツ連動型広告」や「キーワードターゲティング」とも原理的には同じですが、コンテクスチュアルターゲティングの場合、ページ単位で解析を行った上で広告を配信するため、精度が高くなることが特徴です。
そのため、「コンテクスチュアルターゲティングは、コンテンツ連動型広告やキーワードターゲティングを発展させた進化した広告である」とも言われています。
3. コンテクスチュアルターゲティングが再注目されている背景
これまではどちらかというと地味な存在であったコンテクスチュアルターゲティングが、2022年の今になって注目されているのはなぜなのでしょうか?
これには「3rd party cookie(サードパーティクッキー)の規制・廃止」が大きく影響しています。
近年、プライバシー保護の観点からcookieが問題視されており、Cookie廃止の動きが起こっています。Cookieには「1rd party cookie(ファーストパーティクッキー)」と「3rd party cookie(サードパーティクッキー)」2種類あり、それぞれ以下のような違いがあります。
3rd party cookieを活用した代表的な広告としては「リターゲティング広告」が知られています。リターゲティング広告はWEB広告の一種で、過去に訪れたことのあるサイトの広告が配信される仕組みです。
この仕組みには「自分の趣味嗜好に合った広告が表示される」というメリットもありますが、一方で問題もあります。
広告ネットワークを介して収集される個人情報は趣味や興味のみに留まらず、家族構成、居住地域や行動範囲や年収、政治的な傾向などを予想できる内容も含まれ、行き過ぎた個人情報収集・追跡が行われてしまっていたのです。
4. 3rd party cookieに依存しない広告配信が可能
AppleのWEBブラウザ「Safari」では、2020年3月には3rd party cookieを完全にブロック。Google は「Chrome」の3rd party cookie廃止を当初予定していた2022年から延期したものの、2023年後半には完全終了するとしています。
日本のデジタル広告業界はこれまで、ターゲット層にリーチする手法として3rd party cookieに大きく依存してきており、近年の3rd party cookie廃止の動きによって新たな広告配信の手法を考える必要に迫られています。
そこで、3rd party cookieに依存しない広告配信の手法として、「コンテクスチュアルターゲティング」に注目が集まりました。
コンテクスチュアルターゲティングの場合、Webページ上にあるコンテンツのコンテキストを分析して広告とマッチングさせるため、3rd party cookieに依存することなく、ユーザーの興味関心に合わせた広告配信が可能です
5. コンテクスチュアルターゲティングのメリット・デメリット
ここからは、コンテクスチュアルターゲティングのメリット・デメリットについて解説します。
5-1. 広告主から見たメリット・デメリット
コンテクスチュアルターゲティングでは、広告主の商品・サービスとの関連性が高いコンテンツを見たユーザーに向けて広告配信ができるため、興味を持たれやすいことがメリットです。コンテンツと関連した広告であるため、押し付け感や違和感を抑え、ブランドイメージを守りながらターゲットにリーチできます。
また、ブランドセーフティの観点からも、コンテクスチュアルターゲティングにはメリットがあります。「自社広告が表示される場所」はブランドにとって非常に重要です。
コンテクスチュアルターゲティングでは、コンテキストを分析することで、コンテンツの関連性だけではなく安全性も判断できるため、ヘイトスピーチやフェイクニュースなど問題のあるページを避け、ブランドが提供する商品やサービスと関連性の高い場所にのみ広告を掲載できます。
一方で、広告枠を見たユーザーの検討度合いまではわからないため、それを踏まえた上で訴求ポイントや広告クリエイティブを工夫する必要があります。
<メリット>
広告主の商品・サービスとの関連性が高いコンテンツをユーザーに向けて配信できるため、興味を持たれやすい
<デメリット>
広告を見たユーザーの検討具合までは分からないため、それを踏まえた上で、訴求ポイントや広告クリエイティブを工夫する必要がある
5-2. WEBパブリッシャーにとってのメリット・デメリット
広告主だけでなく、広告主に広告掲載場所を提供するWEBパブリッシャーにもメリットがあります。コンテクスチュアルターゲティングを取り入れれば、ユーザーのプライバシーを保護しながら、効果的な広告枠を広告主に提供可能です。
また、コンテキストに合わせて関連性の高い広告配信が可能となるため、小規模のニッチなパブリッシャーも広告収益拡大につなげられるでしょう。コンテンツの質や1st party cookieのデータによって、差別化を図れる可能性もあります。
一方で、広告効果はまだ検証が十分ではなく、費用対効果の検証という課題もあります。効果を出すためには、新たな戦略の立案や試行錯誤が必要と考えられるでしょう。
<メリット>
コンテクスチュアルターゲティングを取り入れると、ユーザーのプライバシーを保護しつつ、効果的な広告枠を広告主に提供できる
<デメリット>
広告効果がまだ十分に検証ができおらず、費用対効果の検証という課題がある
6. まとめ
日本でも、2020年に個人情報保護法が改正され、2022年4月1日から施行となりました。個人情報に関する法規制は世界中で成立しており、世界的な大企業であるGoogleやAppleも3rd party cookieの利用制限に乗り出しています。
コンテクスチュアルターゲティングは、3rd party cookieに依存しない手法の中でも有力なものであり、ブランドセーフティの観点からも安心して取り入れられます。
AIの進歩によりコンテクスチュアルターゲティングの精度は飛躍的に向上しており、今後効果検証や活用が進むことで主流になっていけば、これまでのブランドマーケティングのあり方に大きな影響を及ぼすことになるかもしれません。