今回は、アプリ内広告における健全化の取り組みであるapp-ads.txtについて、
・app-ads.txtとは
・app-ads.txtが誕生した背景
・app-ads.txtを導入するといいこと・しないと悪いこと
の3つを解説します!
それでは、始めましょう!
1. app-ads.txtとは
「app-ads.txtって何?」
と聞かれたら、なんと答えますか。 「テキストファイル。」
「拡張子みろよ。」
という冗談は置いといて。
app-ads.txtは、デジタル広告の取引健全化のために活動しているIAB Tech Labが開発・提唱し、推進しているアプリ広告エコシステム健全化のための取り組みの一つです。
app-ads.txtは、
・”app-ads.txt”のテキストファイル
・”app-ads.txt”を検知するクローラー
・”app-ads.txt”による認証者を識別して広告枠を買い付けるアドエクスチェンジ、SSP、その他の広告ネットワークなどのシステム
などから成り立つ仕組み全体を指します。
(以降、仕組みとしてのapp-ads.txtを「app-ads.txt」。ファイルとしてのapp-ads.txtはそのままapp-ads.txtと表記します。)
指定されたWeb上に設置されたapp-ads.txtファイルを、クローラーが読み取り、広告配信事業者のシステムに、「app-ads.txtを実装しているので、偽装されていないアプリ」であると登録されることで仕組みが働きます。
この仕組みの詳細や、この仕組みがなぜ大事なのかは、次の章で解説します。
app-ads.txtという名前のテキストファイルは、以下のようなテキストで構成されたテキストファイルです。
このテキストファイルを、アプリストアで登録しているWebサイトのルートドメインに設置します。
配信事業者の名称, Publisher/Account ID, 取引タイプ(Direct, Reseller), 認証タグ
クローラーがWeb上に設置されたapp-ads.txtを読み取ると、上記の4つの情報が配信事業者に登録されている情報と一致するかを確認します。
Publisher IDなどは正規のユーザーしか知り得ない情報ですので、その情報が正しく示されていれば、ロボットやbotではないことを確認できます。
また、ストアにサイトを登録できるのも、そのサイトにファイルを追加できるのも、アプリの開発者やサイトの管理者のみですので、生身の人間がアプリとサイトを提供していることを確認できます。
実際にアプリからリクエストを受け取った時に、そのアプリがapp-ads.txtで認証されているかを確認します。
app-ads.txtが実装されていれば、そのリクエストは実在するアプリでユーザーによって発生したものだと判定できるので、安心して広告費を支払って広告を表示することができるようになります。
こうして、悪意のある第三者によるなりすましや、botによる不正なリクエストをはじき、アドフラウドを防ぐことで健全化を目指すのがapp-ads.txtなのです。
2. 「apps-ads.txt」が誕生した背景
デジタル広告における健全化とは、アドフラウドと呼ばれる各種の不正を防ぎ、広告主が支払った広告費が正しくアプリ開発者や広告ネットワークなどの関係者に分配され、広告を通じてそれぞれが成長していく環境に整備することです。
アドフラウド、つまり不正がある状態だと、悪意ある第三者によって広告費が不正に盗み取られ、アプリ広告が広告主にとって魅力を失います。
こういった悪意ある第三者の例として、実際には存在しないアプリやユーザーを装って広告をリクエストし、収益を得るものがあります。
もちろん、そういったユーザーが存在しないリクエストへの広告配信は費用こそかかりますが、効果は絶対に0です。
これにより、広告主は本来得られるはずの効果が得られなくなりますし、アプリ開発者も自分のアプリで発生していたリクエストが奪われることで収益化の機会が失われてしまいます。
例えば、1000万円の費用をかけて広告主が広告を出稿したとします。
1件のコンバージョン(顧客獲得)に、1000円かかるとしましょう。
全体の予算が1000万円ですので、1万件のコンバージョンが獲得できはずです。
しかし、配信先の半分がアドフラウドがだったらどうなるでしょうか。
一件のコンバージョンにかかる費用は、1000円のままですが、その獲得ができる配信が全体の半分になってしまいます。
最初の1000円はアドフラウドに盗まれ、次の1000円で獲得して、…….
これを繰り返すと、結果として1件あたりにかかる費用は倍になり、獲得できる件数は半分になってしまいます。
自動販売機に例えるなら、100円のお水を買おうと思って100円玉を入れたらそのまま飲み込まれてしまい、もう1枚入れなければいけないようなものです。
かけたお金の半分が何も産まずに盗まれてしまう、そんな相手は選びたくないですよね。
そんな心理が広告主に働くと、だんだんアプリ広告への出稿を嫌がるようになります。
そうなると、アプリ広告市場に流れる広告費が減ってしまうので、AdMobやUnity Adsを通じてアプリ開発者が受け取れる収益も減ってしまいます。
しかも、減った広告費も容赦無くアドフラウドに盗まれてしまいます。
つまり、広告市場の健全化は、広告主・アプリ開発者・広告配信ネットワークの3者にとって非常に重要なテーマなのです。 実際に、app-ads.txtが開発される前の2018年には、日本で配信されたアプリ内広告の約20%がアドフラウドでした。
アメリカでは、その損失額が年間8000億円に上るとの報告も出ています。
そこで、app-ads.txtを導入することで、広告費を横から掠め取っていくアドフラウドを取引から排除できるような仕組みが作られたのです。
3. app-ads.txtを導入すると起こるいいこと
app-ads.txtを導入することで、アプリ開発者にはいいことが3つあります。
1.認証されているアプリにしか配信しない広告主がいるため、app-ads.txtなしに比べて多くの案件を受け取れる。
2.多くの案件の対象となることで、表示単価(eCPM)が上がったり、在庫切れのリスクが下がったりする
3.アドフラウドの比率が下がることで、広告主がアプリ面に出稿するデメリットが薄れ、予算をアプリ内広告に割いてくれる。つまり、収益の母数が大きくなる
ポイントは、
・収益が増える
・アプリ内広告市場が安心な場になる
ということです。
逆に、AdMob(Google)などではapp-ads.txtを設置していないアプリからのリクエストを一切受け付けず、購入しないことを発表しています。
今後同じような対応をする配信事業者は増えていくと予想されます。
早めに対応しておくことで、「うそっ!広告出てないんだけど!」と慌ててから対処する必要がなくなりますよ!
4. まとめ
今回は、『広告が表示されなくなる?!app-ads.txtを導入して収益を守ろうと題して、「app-ads.txt」の紹介をしてきました。
アプリ内広告の収益を守るために、とても大切な仕組みです。
必ず実装しましょう。
また、次回は実際にapp-ads.txtを作って設置するやり方を解説します。
実装手順がわからないという方は、ぜひお読みください。