AdMobを使った配信に慣れてくると、次に目指したいのは、
「どうやったら、さらに収益を高められるか。」ですよね。
今回は、アプリ内収益をさらに高めるためにできる機能をご紹介します。
では、どうやったら収益は高めることができるのか。
例えば、収益を1.5倍に伸ばすにはどうしたらいいのでしょうか。
結論を言えば、収益を決定する要素をそれぞれ高めていけばいいのです。
収益=枠の表示回数(インプレッション) x 枠単価
どちらかを上げることで、収益は高められます。
インプレッションは、主にユーザー数や広告枠数などで決まりますが、ユーザー数をすぐに1.5倍に増やすことは現実的ではありません。
それに、広告枠を1.5倍に急に増やせば、ユーザーが離れてしまいかねません。
ではどうすればいいのか。残っているものがありますね。
そうです。枠単価。広告が一回表示された時の収益を高めていけば良いのです。
どうすれば枠単価を高められるのか。
そうです。今回のテーマ、メディエーション を使えばいいのです。
1. メディエーションとは
まず、この発音しにくいカタカナ用語の意味から話を始めましょう。メディエーション は、「調停・仲介」という意味の Mediation をカタカナで表記したものです。
mediationには、「争っている複数の人たちの、議論をまとめる」という定義があります。https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/mediationから意訳
↑Mediationのイメージ図
本人たちでは解決できない問題を解決することです。
一方で、AdMobにおけるメディエーション は、以下のように解説されています。 ”メディエーションは、アプリに広告を配信するすべての広告ソースを 1 か所で管理できる AdMob の機能です。メディエーションを使用すると、届いた広告リクエストを複数の広告ソースに送信し、使用可能かつ最適な広告ソースを確実に見つけて広告を掲載することができます。メディエーションでは、メディエーション グループを使用します。これにより、最適化された掲載結果に基づいてすべての広告ソースをランク付けして、収益を最大化することができます。”
なぜ、「争っている複数の人たちの、議論の着地点を見つける」と「アプリに広告を配信するすべての広告ソースを 1 か所で管理できる AdMob の機能」が同じ単語で表されているのでしょうか。
ここでは、イメージを用いて解説します。
想像してもらいたいのが、一人の姫を巡って、複数の男たちが争っている状況です。
お姫様は、「私を一番幸せにしてくれる人がいい」といいますが、男たちは「自分が、一番幸せにできる」と、一切譲りません。
そこで登場するのが、ちょっぴり現金主義な王様です。
王様にとって、姫を幸せにできるかどうかは、結婚相手が裕福かどうかでした。
そこで、姫を本当に幸せにできる男を見極めるために、「姫に一番高価な贈り物をしたものを姫の結婚相手とする。」と決めました。
結果、最も高価な贈り物をした男が姫と結婚することができ、姫を巡る争いが終わりました。
めでたしめでたし。
やけに現実的でシビアな御伽噺が始まったと驚かれたかもしれませんが、メディエーションの仕組みはまさにこのストーリー通りなのです。
姫→広告を表示するチャンス、インプレッション
男たち→広告
王様→メディエーション
贈り物→広告入札
結婚→画面への表示
と読み替えてみてください。 インプレッションは、「私を一番幸せにしてくれる人がいい」と言いますが、配信事業者たちは「自分が、一番幸せにできる」と、一切譲りません。
そこで登場するのが、メディエーションです。
メディエーションは、インプレッションを本当に幸せにできる広告を見極めるために、「インプレッションに、一番高価な入札をした広告を表示する。」と決めました。
結果、最も高価な入札をした事業者が配信することができ、インプレッションを巡る争いが終わりました。
どうでしょうか?
ストーリーは全く同じですが、急にビジネスライクな競争の話になりましたね。
これが、メディエーション で起こっていることです。
ここで、メディエーション(=王様)は、ストーリーの中で「争っている複数の人たちの議論をまとめる」役割を担っていました。まさに、語の意味そのものの役割を果たしています。ですので、届いたリクエストを複数の広告ソースに送る機能をメディエーション と言っているのです。
メディエーションの仕組みと効果をまとめましょう。
1.メディエーション とは、届いた広告リクエストを複数の配信事業者に知らせる
2.メディエーション は、複数の選択肢から一番いいと思われるものを選ぶので、より収益を高めることができる
↑メディエーションのイメージ図
AdMob(図中のSDK)が司令塔となって、複数の広告ソースにリクエストを順番に送ります。
実際に、メディエーション を導入することで、アプリのeCPM(広告収益を1,000回表示あたりで示した指標)が、20~30%上がった事例もあります。
メディエーションを導入することで競争原理を働かせて、枠あたりの単価を引き上げられるのです。
2. メディエーションの仕組み
ここでひとつ、裏話があります。
王様は、実は全員に一斉に聞いていたわけではなく、一対一で順番にどんな贈り物をするのか聞いていたのです。そして、途中で要求以上の贈り物が贈られた時点で結婚相手を決めました。
それよりあとで順番を待っていた男たちに出番はなかったのです。なので、順番が後ろの男たちは、どんなに高価な贈り物を持っていても、それによって姫を射止めるチャンスは得られなかったのです。
実際のメディエーション でも同じことが起こっています。配信事業者は、インプレッションに対していくらで入札するかを、前もって決まっている順番でしかアピールできません。
つまり、自分の前に落札者が決まってしまうと、その決まった相手より高い価格を用意していても、チャンスを活かすことができなくなってしまうのです。
この、事前に決まった順番で入札価格を返す仕組みを、ウォーターフォール方式と言います。流しそうめん方式ということです。順番が先の人ほど、チャンスをゲットする可能性が高い仕組みになっています。
ここで、「それじゃあ、本当に一番高い価格にならないじゃないか」とお思いの方、鋭いですね。そうなのです。順番が固定されてしまっていることによる機会損失が起こってしまうのも、ウォーターフォール方式の特徴です。
↑ウォーターフォールによって、機会損失が起きている例
基準を超えた時点でオークションは締め切られます。
締め切られた後の価格はいくら高くても購入できません。
では、どうすればいいのか。つぎからは、AdMobメディエーションがどうやって機会損失を避けて、収益を最大化するのかを解説していきます。
3. メディエーション運用のポイント
ここまでで、メディエーションの仕組みと、ウォーターフォール方式を解説してきました。
その中で、順番が決まっていることで機会損失が起こってしまう、メディエーションのメリットを活かしきれないリスクがありました。
ここからは、その疑問にAdMobがどう対応しているのかを解説していきます。
問題を起こさないためには、問題が起こる原因を解決すればいいですよね。メディエーション での機会損失が起こってしまう原因は、入札価格を聞く順番が最適化されていないことにあります。ですので、解決するには、並べる順番を最適化すればいいのです!
では、どう並べ方を最適化しているのかを解説していきます。
AdMobは入札価格を聞く順番をどう最適化しているのか。
非常にシンプルです。それぞれのネットワークがいくらぐらいで入札してくれるのかを予測して、その予測した数字が大きい順に並べているのです。
AdMobは、この順番決めをインプレッションごとに行っています。
その順番決めに使う数字を予測する方法を、AdMobはネットワークの種類によって使い分けています。
メディエーションに追加する広告ソースには、AdMobネットワークと、2種類の第三者広告ネットワークの、合計3種類があります。それぞれに応じて、計算方法を使い分けています。
AdMobネットワーク:AdMobネットワークが実際に入札する予定の金額を使用
広告ネットワーク:AdMobが過去の実績から自動で予想した入札価格を使用
カスタムイベント:ユーザーが手動で設定したCPMを使用
さて、また新しい単語が出てきましたね。
「広告ネットワーク」と「カスタムイベント」です。
AdMobメディエーションと自動で接続でき、eCPMの最適化を自動で行えるネットワークを、広告ネットワーク(第三者広告ネットワーク)と言います。
逆に、アダプタなどが対応しておらず、CPMを手動で運用する必要があるネットワークは、カスタムイベントとしてメディエーショングループに追加します。
脇道にそれます。詳しく知りたい方だけお読みください。
より正確に説明すると、AdMobネットワークのリアルタイムeCPMと、追加したネットワークのeCPMを、競合させてリクエストを渡す順番を決めています。
どのネットワークがリクエストをfill(広告を表示)するかは、リクエストを渡した先でネットワークがインプレッションを買いたい広告を見つけられるかで決まります。ただし、その際購入価格は評価されません。¥0.1でも¥0.01でも購入が決定します。
ウォーターフォールでAdMobネットワークの順番が来るまで、これが繰り返されます。メディエーショングループでインプレッションの購入希望がなかった場合、リクエストはAdMobネットワークに渡され、AdMobネットワークから広告が配信されます。
この時、第三者ネットワークに渡すと、いくらで購入されるかは決定できません。AdMobネットワークより高くなる場合も、逆に安く買われる場合もあります。ですので、購入される価格を最大化するために、ウォーターフォール順を最適化し、AdMobネットワークより高い価格で購入するネットワークだけにリクエストを渡せるようにする必要があります。
本題に戻りましょう。
「広告ネットワーク」と「カスタムイベント」の違いでウォーターフォールで大事なのは、
・広告ネットワークでは、eCPMの最適化を自動で行える
・カスタムイベントでは、eCPMは手動で運用する必要がある
の部分です。
AdMobメディエーションに追加できる広告ソースには3種類あります。
広告ネットワークは、実績に基づいた数字を予測に使うため、実際の入札価格と差が小さくできます。つまり、機会損失が起こりにくいのです。順番決めで期待した数値と近い数字で入札してくれますからね。
逆に、カスタムイベントは、固定された値を使うので、実際の入札価格との差が出やすくなってしまいます。
よって、メディエーション を利用して運用するときに気をつけることは4つです。
1.メディエーション は、ウォーターフォール方式で行われる
2.入札の表示順を適切に設定しないと、機会損失が起こってしまう
3.追加できるネットワークには3種類あり、カスタムイベントはeCPMが自動で最適化されない
4.カスタムイベントを追加したら、設定したeCPMと実際の入札価格に差がないかをこまめに確認する必要がある
これらの理由から初めて、メディエーションを利用する場合は、eCPMの最適化を行えるネットワークをお勧めします。
該当ネットワークのリストはこちら
・どんなネットワークを使えばいいのかわからない
・メディエーション の設定を手伝って欲しい
というご要望がある方は、お気軽にお問い合わせください!
アプリ特性にあったネットワークをアドバイスします!
また、具体的な設定方法や収益の確認方法は次回お送りしますので、お楽しみに!
4. まとめ
ここまでで、メディエーション について詳しく解説してきました。
特に、メディエーションパートナーとして追加する第三者ネットワークの違いは運用上重要な違いになってきますので、しっかりと区別をつけておきましょう。
次回配信は、今回の続きとして、メディエーションの設定方法から収益の確認方法をステップごとに解説します。
管理画面での設定方法から、SDK内の記述まで、メディエーションを始める1から10までお送りします。